エッセイ

山を抱く

山冬、埼玉北部へ仕事に行きました。
電車の中から、猛々しい秩父連山が間近に見える風景をとらえた瞬間に何故か、“ほっ”としました。
ユング心理学的に山はオールドワイズマンという原型。
原型とは誰の心にもある象徴とそのシンボルを意味します。
オールドワイズマン(賢老人)は自分の心の中にある、雄雄しくたくましく示唆をしてくれる父性的ような存在。
山国で育った女性はたくましいかも・・・。
そんな仮説をたて、環境心理を考え、自分がもっとたくましく雄雄しくなりたいと願っているのだ、きっとと自分の心に仮説をたて問いかける。
「もっとたくましかったら?」
「変えられるのに!創れるのに!」
ああ、自分がいつももどかしいと自分で思っているのだな。
と、自分の心にもどかしさを発見して、落ち着くという体験。
心に山を抱く。
短絡的や両極端に走りがちな日本の文化に、否定するのではなく、正しい正しくないと評価するのではなく、自分を把握する、受け止める、受け入れる。
「普段心が何気なく動いたものでも、探求すると、いろいろな自分を知り自己一致することが出来る。」
そんな探求の機会を人にも自分にも投げかけ続けていきたいと思う。 (Jun.2003)

神戸の復興

神戸ある大学での講師で、2002年11月に神戸に行きました。
夜景、とても感動しました。神戸の街がオレンジの光にちりばめられて美しいのです。
新神戸に向かう際、タクシーの運転手さんに「7年前と比べて本当に復興しましたね」と声をかけました。タクシーの運転手さんは「うーん。そうだね。けれどねぇ、家なんかも外側は綺麗でも中は残っているよね・・・。」と。
私は、7年前阪神淡路の震災のニュースを見て何もできない自分に愕然とし、カウンセリングを学びました。その半年後にリスニングボランティアで神戸に入っています。
どんな場所かの土地勘もつかめずに行って帰ってきましたが、7年ぶりの神戸の復興を身をもって体験し感動しました。そして、その地に生活する人々の誇りと今の心情を思うと胸がぎゅーっとなりました。
日本の文化を「お客様をもてなすときには上等な茶碗でもてなし、普段は欠けた茶碗で食べていることは内緒にしている。」と例えた人がいました。
今、私は心理カウンセラーとして何ができるか。
そんな探求を続ける度に自分の人生の転機をくれた神戸を思わずにはいられないのです。 (Jan.2003)

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